『体においしい「ごはんの力」 できることから始めるプチ健康的食生活』(金丸弘美、義岡千恵子著、川口澄子画、KKベストセラーズ)がまた昨今注目を集めている。ごはんを通して、改めて健康と食べることについて考えているのが本書である。
昨今は様々な健康情報があるが、スケプティクスな健康情報もそれだけ増えている。
食べることの第一義的な目的といえば、生命や健康の維持や成長、身体活動で必要な栄養素をバランスよくとることである。
そこで、ご飯を食べることの意義をを、改めて見直そうという潮流があるのだろう。
食べる量や糖質など争点の多い「食べること」
『体においしい「ごはんの力」 できることから始めるプチ健康的食生活』は、新刊ではない。
発行されたのは2006年である。
その本書が、最近また評価を高めている。
本書が標榜するのは、和食の素晴らしさと、食べるもののバランスである。
食生活と健康については、いろいろな対立がある。
たとえば、少食のすすめという健康法があり、一方で、いや、そんなことはない、という対立がある。
また、植物性タンパクがいいという意見に対して、動物性が良いという意見もある。
何より熱いのは、糖質制限の是非である。
食事療法を必須とする糖尿病患者の適応だった糖質制限が、近年、ダイエットや、一般の人の健康食のような言われ方をするようになった。
肥満や病気各種は、糖質をとるからである。
さすれば、糖をやめましょう。そのかわり、肉や卵や乳製品をしっかり摂りましょうというものだ。
この潮流から、最近では、日本人の主食であるコメ、「ご飯」が悪役にされてしまった。
しかし、そこはスケプティクス(懐疑的)に考えるべきである。
糖質制限は心疾患のリスクがあると言われる。
何より、ご飯とおかずで成り立っている食事に、その一方を全く取り去ってしまったら、食事としてのバランスが取れない。
本書では、そうした健康法に警鐘を鳴らしているわけだ。
バランスが大切な食生活
本書はまず、「あなたの食生活は、大丈夫?」というタイトルで、深刻な日本人の食生活のデータを挙げ、「あなたはいくつ当てはまりますか」と追及する。
具体的には、以下がそうである。
- 20代男性の2人に1人、女性の3人に1人は朝食を抜くことがある
- 20代女性の21.4%は痩せ過ぎ。でも7割は「自分は太っていると思っている」
- 働き盛りの男性(30~40代)の31%が肥満
- 現代人が1回の食事に噛む回数は620回で、戦前(1420回)の半分以下
- 野菜は1日350g食べるのが理想だが、いまの日本人は平均266.7gしか食べていない
- 20~60代女性の40.6%が便秘で悩んでいる
- 20~30代男性の54.3%、女性の18%がタバコを吸っている
- 女性の74%、男性の69%は、運動する習慣がない
昨今の禁煙ブームで、喫煙者の数字は少し変わったかもしれないが、基本的には今も残っている課題である。
朝食を食べる、野菜を食べる、たばこをやめる、運動をする、よくかんで食べる、といったことを求めている。
食事は、バランスを求めているが、具体的には、次のような図で示している。
『体にいい「ごはんの力」』より
上から順に、より多く摂るべきものとしている。
一番上は主食である。ごはん、パン、麺などの穀類だ。
糖質制限派とは、ここで根本的に違う。
2段目は、意外かも知れないが主菜ではなく副菜が来る。
体の生理機能を整える食物繊維や、ビタミンで栄養素を補う野菜、きのこ、いも、海藻類などである。
3番目の主菜は、血や肉をつくる良質なたんばく質を供給する、肉類、魚類、卵、大豆などメインデッシュである。
4番目、すなわち一番下の左側には、骨を丈夫にするカルシウムの多い牛乳や乳製品があり、その右側がビタミンCやカリウムを供給する果物である。
糖尿病で食事に制約を設けなければならない場合を除けば、これは誰もが守るべきバランスである。
糖質は血管をベタベタにする。さすれば肉や卵でお腹いっぱいにして糖質をやめましょう、ではそのバランスが崩れてしまうのだ。
巷間の糖質是非論争。いろいろ意見や体の事情はあるだろうが、人間にとって望ましいのは、あくまでも上記のバランスなのである。
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