「緑茶のうがい」がインフルエンザの予防に有効かを調べる

「緑茶のうがい」がインフルエンザの予防に有効かを調べる

「緑茶のうがい」がインフルエンザの予防に有効という話がある。インフルエンザにはうがいが推奨されるが、、緑茶には抗酸化や抗ウイルス成分が含まれるからだ。それらの成分でうがいをすれば、水によるうがいよりも予防効果を期待できるという考えである。

インフルエンザといえば、ワクチン接種の必要か不必要かの議論が喧しい。

今年もそんな季節になったわけだが、罹る前に予防ということでは、昨今もてはやされているのが「緑茶のうがい」だ。

もともと、かぜやインフルエンザにはうがいが推奨されていたが、抗酸化や抗ウイルス成分の含まれる緑茶でうがいをすれば、水以上の効果が期待できるという理屈である。

しかし、本当にそうなのか、スケプティクス(懐疑者)の立場から改めて考える必要がある。

緑茶は万能薬の如く様々な効果が期待されてきた

緑茶の効用については、確固たるエビデンスの有無はともかくとして、これまで様々なことがいわれてきた。

発ガン作用抑制、殺菌、口臭防止、虫歯予防、ダイエット、エイズ予防、動脈硬化や脳卒中予防、中性脂肪抑制、ある程度の健胃腸作用、血糖値降下、抗酸化、抗ウイルス、ダイオキシン毒性抑制、アトピーや花粉症予防、pH調整、o-157殺菌作用など、もう万能薬の如く様々な効果がいわれてきた。

具体的には、カテキンが殺菌・抗酸化作用に、多糖類が血圧低下に、カフェインが覚醒、強心、利尿作用に、ビタミンCが抗酸化、ストレス解消、風邪予防に、ビタミンEが抗酸化、老化抑制作用に、β-カロチンが抗酸化、抗がん作用に、γアミノ酪酸(GABA)が血圧降下作用に、フッ素が虫歯予防に、フラボノイドが口臭予防、血管壁強化にはたらくとされている。

さらに、緑茶のミネラル成分は烏龍茶の3倍といわれている。

ある調査によると、緑茶100gあたり、ナトリウム3mg、カリウム27mg、カルシウム3mg、マグネシウム2mg、リン2mg、鉄0.2mg、亜鉛微量、銅0.01mg、マンガン0.31mg含まれていると言われる。、

さすれば、インフルエンザの抗ウイルス効果も期待できるというわけだ。

緑茶に含まれる、カテキン(お茶の渋味成分)やサポニンの抗酸化作用や抗ウイルス作用が、口腔を通じて侵入するインフルエンザウイルスを退治し、ビタミンCやビタミンEが皮膚や粘膜の健康維持(コラーゲン形成)に作用したり、免疫機能を助けたりといったところだろう。

もともとうがいは推奨されているが、水でうがいするよりも、緑茶でうがいしたほうが、そうした効果を期待できるという理屈である。

緑茶のうがい、ここまで見るとバラ色のようである。

しかし、ここでは、スケプティクスな立場から、緑茶のうがいを考えてみる。

緑茶のうがいと水のうがい

インフルエンザの流行するシーズンが近づいてきたので、ネットも予防や治療薬の情報がいろいろ出ているが、『日刊ゲンダイ』(2015年12月4日付)の「役に立つオモシロ医学論文」という連載は、著者の青島周一氏が、緑茶のうがいについての効果に言及している。

 インフルエンザの流行シーズンが近づきました。予防にはワクチン接種が基本ですが、その他の予防策としてマスクの着用、手洗い、うがいなどが行われています。
「緑茶でうがいをするといい」という話も聞くことがあります。本 緑茶には「カテキン」が含まれており、実験室での研究ではインフルエンザウイルスの活性を抑えることが報告されているようです。とはいえ、実際に人が行った場合の効果はどうなのでしょう。
 緑茶によるうがいが、インフルエンザ感染症をどれだけ予防できるか検討した論文は2014年5月、科学や医学分野で有名な「プロス・ワン」という学術誌に掩載されました。
 この研究は11年12月~12年2月のインフルエンザ流行期に、静岡県の高校生757人を対象としたもので、「1日3回、緑茶でうがいするグループ」(387人)と「1日3回、水でうがいするグループ」(370人)にランダムに振り分け、インフルエンザの発症を比較しました。
 研究期間中、インフルエンザ発症は、緑茶でうがいをしていたグループで4.9%、水でうがいをしていたグループで6.9%と、緑茶でうがいをしていたグループで31%低い傾向にありました。しかしながら、統計的に明確な差はありませんでした。
 この研究では対象となった高校生が緑茶か水か、自分がどちらのグループに割り当てられたのか知っており、緑茶うがいをしていたグループはより予防意識が高まった可能性を考慮すると、実際にはほとんど差がない可能性もあります。
 そもそも「インフルエンザの予防にうがいが有効な手段なのか」という議論もありますが、風邪予防の観点も含めれば、現時点では水でのうがいが費用対効果に優れるといえそうです。

この記事の趣旨を改めてまとめてみよう。

「緑茶のうがい」のまとめ

結論としては、「緑茶のうがい」はインフルエンザの有意な予防効果はないということである。

だったら、費用対効果に優れる「水のうがい」でいいでしょう、というのが記事の結論だ。

もちろん、上記の緑茶の成分や効能があるのだから、飲用で摂取することはできる。

ただ、うがいで「緑茶のうがい」は、「水のうがい」に決定的な差をつけることはできなかった、ということである。

まあなんにせよ、外から帰って来たら、うがいを習慣づけることである。

健康情報・本当の話

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  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本

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