卵好きな県民はがんが多い!?という説が出たらどう思われるだろうか。統計的にはそのような考察をされてしまうものがあるとい

卵好きな県民はがんが多い!?という説が出たらどう思われるだろうか。統計的にはそのような考察をされてしまうものがあるとい

卵好きな県民はがんが多い!?という説が出たらどう思われるだろうか。安い完全栄養食の鶏卵といえばむしろがん予防になりそうな栄養素がたくさんふくまれている。しかし、統計的にはそのような考察をされてしまうものがあるというのだ。

鶏卵のイメージは、安くて、コンパクトで、いろいろな料理の材料になって、たんぱく質を中心にいろいろな栄養素が含まれている。

鶏卵を食べてがんになったら、いったい何を食べたらいいのか、と思われるかもしれない。

しかし、統計的にはそのような考察もあるという話だ。

スケプティクス(懐疑者)な立場からこの説について考えてみる。

『卵を食べれば全部よくなる』という本も

鶏卵と健康の関係については、半年ほど前に卵を絶賛する書籍をご紹介したばかりである。

404 NOT FOUND | スケプティクスな生活の中の理性と非合理
科学者でもオタクでもない普通の人のスケプティクス(懐疑者)な論考です

同書によると、著者の佐藤智春氏は、人間の健康のカギを握るのは老若男女を問わず、たんぱく質であり、それををどれだけ摂っているかだと断言している。

そして、若い人は成長や体の維持のために、高齢者も認知症防止の観点からも卵を1日3個は食べようと述べている。

卵は、アミノ酸スコアが100といわれる完全栄養食。

ヒヨコとして孵化するために必要な栄養成分を全て持ち合わせているわけだから、当然といえば当然である。

ヒヨコの脳、神経や全身の細胞を造るのに必要な脂質類とタンパク質、骨格づくりに必要なカルシウムやリンなどが豊富に含まれている。

鶏卵2個に含まれるたんぱく質は、成人が1日に必要なたんぱく質の約26%にもなるという。

人間の体内ではつくれない、8種類の必須アミノ酸すべてがバランス良く含まれていることで、エネルギー源として働き、疲労回復や内臓の働きの活性化も助けるといわれている。

鶏卵に含まれるコリンには、血圧を低下させ、中性脂肪の量を調節する働きがあり、高血圧や高コレステロール血症や脂肪肝などの予防や改善にも効果があるとされている。

また、鶏卵にはメチオニンという必須アミノ酸が豊富に含まれ、体の老廃物や毒素などを排泄する。たとえば、肝臓でアルコールを分解するときに必要な成分である。

ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンEなど卵に含まれているビタミン群は、活性酸素の発生を抑えたり、除去したりする働きがあるとされる。

卵黄に多く含まれている卵黄レシチンは、記憶力や集中力を高めて認知症に有効だと言われている。

卵白には、殺菌効果抜群で免疫力を高めるリゾチームという酵素が含まれている。タマゴ酒は理にかなっている民間療法といわれる所以である。

簡単に述べると、ビタミンCを除くほぼ全部の栄養素が含まれているのだ。

完全栄養食の懸念とは……

それだけの栄養食だが、ひとつだけ懸念されていたのは、コレステロールである。

確かに、卵のコレステロールの含有量は比較的多く、また産鶏の餌の状態にかかわらず安定しているという。

具体的には、卵黄中に約1.6%(全卵100グラムで400~500mg)含まれ、そのうち約84%はフリーのコレステロールで、16%がエステル型のコレステロールといわれている。

だから、卵を食べるとコレステロール値が、上昇してしまうというわけだ。

しかし、最近の研究者の間では、この懸念はほぼ否定されている。

簡単に述べると、コレステロールは人間の肝臓で作られるもので、食べ物のコレステロールがそのままダイレクトに人間のコレステロール値を上げるわけではない、ということである。

また、鶏卵に含まれる卵黄レシチンには、コレステロールを除去する作用もある。

だから、コレステロールも無問題。

そこで、上記の『卵を食べれば全部よくなる』のような書籍も上梓されるわけだが、今回は新たな懸念が浮上した。

それは、「卵好きな県民はがんが多い!?」という説である。

卵好きな県民はがんが多い!?

卵好きな県民はがんが多い!?という説については、『日刊ゲンダイ』(2015年12月3日付)の連載「家計簿を見れば病気がわかる」(連載24)の「卵好きな県民は肉も大好でがんが多い!?」に書かれている。

卵自体に発がん性があるわけではないが、卵消費の多い県はいずれも標準化罹患率が全国平均を上回り、逆に卵消費が少ない県の模準化罹患率は低めだという気になるデータがあるというのだ。

卵好きな県民は肉も大好でがんが多い!?

ただ、それについては、卵だけでなく、もうひとつのキーワードが絡んでくる。

それは、「肉」である。

 ゆで卵、卵焼き、目玉焼き、卵かけごほん……。卵は食卓のなかで多彩で重要な役割を担っています。
 そんな卵が大好きなのは、鳥取県民です。鳥つながりなのでしょうか、堂々の1位。1世帯当たり年間に40?近くも消費しています。Mサイズの卵の重さを60?とすると、約656個分。1日当たりに直すと約1.8個になります。
 以前、卵は「血中コレステロールを上げるから、できるだけ食べないように」といわれていました。実際、卵1個に、豚肩ロース300?分のコレステロールが含まれています。
 しかし、今世紀に入ってから、食事で取るコレステロール量と血中コレステロール濃度には、ほとんど相関がないことが分かってきました。卵を多く食べても食べなくても、血中コレステロールはほとんど変動しません。言い換えれば、コレステロールを気にして、卵を控える必要はないということです。
 しかし、国立がん研究センターが公開している「がん標準化罹患率」(男子・全部位)を見ると、卵消費の多い県は、いずれも標準化罹患率が全国平均を上回っています。逆に卵消費が少ない県の模準化罹患率は低めです。これはどういうことでしょう。
 もちろん、卵に発がん性があるわけではありません。特徴的なのは卵を多く食べている県は、生鮮肉の消費も多めの傾向があることです。
(表)には、卵の消費量の多い県、少ない県と、生鮮肉の消費量の全国順位を載せました。卵2位の奈良は肉5位、卵3位の愛媛は肉8位、卵4位の和歌山は肉2位、といった具合。逆に卵の消費が少ない県は、肉の消費も低調です。「赤身肉は大腸がんのリスクを上げる」ともいわれていますし、卵も肉もとなると、やはり栄養的に偏ってしまう可能性があります。
 卵が肉を呼ぶのか、肉が卵を引き寄せるのかまでは分かりません。ただ、すき焼きに生卵の組み合わせは、全国的に定番でしょう。ひよこが生まれるほどですから、卵の栄養バランスは完璧なはず。肉との相乗効果で、体に悪い影響が出ているのかもしれません。長浜バイオ大学‥水田宏教授(医療情報学)

卵と肉を食べることでタンパク質が過剰になるのか、卵と肉を掛けあわせて発がん物質ができるのか、肉そのものに発がん物質があるのか、これだけではわからないが、気になるデータではある。

筆者はやはり、問題の本質は生鮮肉摂取にあり、水田宏教授が推理するように、すきやきなど、肉好きは卵も積極的に食べる食生活になっているのではないかと思われる。

さすれば、このところ話題になっている「赤肉と発がん」の関係は分からないが、とりあえず、肉の摂取についてはちょっと今回のデータを心に留めておいたほうがいいかもしれない。

卵を食べれば全部よくなる

卵を食べれば全部よくなる

  • 作者: 佐藤 智春
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2014/12/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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